蝕みの果実/船戸与一

蝕みの果実 (講談社文庫)

蝕みの果実 (講談社文庫)

買ってからしばらく積ん読だった本です。あらあら短編集でした。
短編集だけれども、全作を通じてあるルールで書かれています。
それは、

  • アメリカが舞台であること
  • 登場人物がスポーツに関連していること
  • 日本人が主人公であること(?)

すみません、3つめのルールはあやふやです。


スポーツがうんぬんというよりも、アメリカを舞台にしてさまざまな人種を登場させることにより、アメリカが抱えている人種問題を暗に提示しています。


個人的に好きだったのは「からっ風の街」というプロレスを舞台にした作品。これには人種問題は出てこないけども、悪役としてキャリアを重ねてきた日本人ベテランレスラーと、プロの世界を「ちょろいもんですよ」と甘く見ているチャラい新人レスラー(これも日本人)との意識の差をまざまざと見せる作品。

プロレスなので、悪役とベビーフェイスがいて、それなりのストーリーで試合をすることが前提。
ベテランレスラーは体をこわし、「場外乱闘に持ち込んで早めに終わらせてほしい」と忸怩たる思いでベビーフェイスに持ちかける。それに対し新人は「悪役なんてちょろいもんっすよ。憎まれればいいんでしょ?」となめてかかった態度でリングに上がる。

運命は意識の高いベテランレスラーに味方するのが筋なんだろうけれども、そう簡単には行かせない作者の構成力と筆力に読後はうーんと唸らされました。