降臨の群れ/船戸与一

今回の舞台はインドネシアのアンボン島。話にも登場するアンボンの英雄「パティムラ」。パティムラで検索してもパティムラ空港ぐらいしかヒットせず、詳細な情報が載っているサイトは少ない。船戸与一好きじゃなかったら知らなかった史実をまた知ったわけで…。

もちろん小説の中身はフィクションなんだけれども、ノンフィクション数十冊分の内容をギュッと詰め込んで、その上にストーリーを載せていくというスタイルは今回もそのまま。

今回の話のベースになったであろう史実。
B-10 マルク諸島

1999年2月、アンボンでキリスト教徒とイスラム教徒の対立から60名が殺害され、町が破壊さ
れる事件があった。ローカルの問題に見えるが、インドネシア全土の宗教不寛容の時代の始
まりであり住民の表情は戦地のように厳しくなってきた。

小説ではイスラム教vsプロテスタント(≠カトリック)という構図。この対立構図をうまいこと利用しようとするアルカイダ・アメリカCIA・インドネシア軍と、それに巻き込まれていく主人公の日本人エビ養殖業者。
話が進んでいくうちにどんどん事件や対立が広がっていって、この数が膨らんだパズルのピースをどうやってまとめるんだろう?というところでおよそ下巻に突入。それぞれの思惑がはっきり分かってきてエンディングを迎えるのだけれども、そのバラバラだったパズルのピースがピタッと1枚にまとまった後のエンディングは、最近の船戸与一作品の中でもベストに入ると個人的には思っている。鮮やかで不満の残らない、きれいな着地だった。