読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

至高の日本ジャズ全史/相倉久人

至高の日本ジャズ全史 (集英社新書)

至高の日本ジャズ全史 (集英社新書)


これは単に日本ジャズが歩んできた歴史を書いた本ではない。著者が気鋭のミュージシャンたちとともに日本ジャズを作り上げてきた半生記である。

自分は60年代や70年代にジャズを聴いて育った人間ではない。その時代には姿形も存在していない。2000年代になってからジャズを聴くようになって、落下傘的に50年代や60年代に録音されたモダンジャズを中心に聴いてきた。ビバップハードバップ、モードジャズ、クールジャズ、フュージョンと年代を経るに従ってジャズシーンが変容していった様を追体験しているに過ぎない。

本場アメリカのジャズが変容していくその時、日本のジャズシーンがどうなっていったかが日本のジャズシーンを作り上げた著者の視点から書かれていて、非常にストンと納得のいく日本ジャズ史としてまとめられている。
著者は来日したアメリカの大物ジャズミュージシャンのコンサートの司会をつとめたり、会場の手配に奔走する一方、日本の若い才能のために舞台を用意し、演奏の機会を与えて、アメリカのジャズ文化を吸収し昇華させる手助けをしている。若い才能が成長し、日本のジャズシーンを引っ張っていく存在になっていく過程が手に取るように分かり、思わず息を呑みながらページをめくった。その過程では60年代に見られた、新宿でのアングラやサブカルチャーの変遷も大きく関わっていることは特に注目すべき点である。混沌の中で若いミュージシャンがもがき苦しみながらそれぞれのジャズスタイルを確立していく。
ここでもう一点注目すべき点がある。それは1970年に著者がジャズと袂を分かち、ロックへと転向していることだ。つまり、60年代に若いミュージシャンのために著者がせっせと働いたことが肥やしとなり、70年以降に彼らの才能が見事に花開いたのだ。花開いた結果は70年代以降の日本ジャズの作品群を見れば一目瞭然である。